人生でいちばん切ない時間

それは好きな人と空港で別れたあとの2,3日かもしれない。

 

首もとにほんのり赤い跡が残っていて、テーブルには飲みかけのマグカップ、抜け殻みたいなコーラが泡もたてずに残っている。そもそも遠距離の恋人とはホイットニーヒューストンのI Will Always Love Youが流れて感動の再会が果たされた瞬間から別れのカウントダウンがスタートである。何度くりかえしても別れだけは"慣れ"がない。突然、世界で1番不幸になったみたいに振る舞いはじめて部屋の1点だけを見つめてみたり、電車の中で涙を浮かべてみたり、いつもは死ぬほど笑えるバライティ番組を観てみたり、する。

 

でも、どんなに不幸でもお腹は空くから母が食卓に並べた白いご飯にアジのひらきなんかを箸でつつく。味噌汁の味気が足りないなんて文句をたれつつ、妹とどっちが先に風呂にはいるかで一悶着する。寝る前には、TwitterInstagramを30分づつみて瞼がおちる瞬間に眠りにつけると朝にはもうアンニュイな気分が消えていたりする。不思議なものだけれど。